1/2ページ目 ぼくはその日もパソコンに向かって、掲示板に返信を書いたり、小説の続きを書いたりと忙しくしていた。 そして、今日何度目かのメール着信を知らせるケータイが鳴ったのは、丁度食事を終えた、夜8時頃のことだった。 あれから、ぱんぱさん以外ともメールをやりとりするメル友を何人か作ったけれど、そのメールも多分そんな一人からのものだろうと思っていた。 ぼくのケータイのアドレスは直接には公開していない。 メールが鳴り止まないなんて事にならないように、教えて欲しいという掲示板への書き込みに対してだけ、教える。 それも、あるていど、掲示板で会話して、その人の人となりを把握して、害のない人物だと分かってからだ。 だから、きっと知り合いだろうと思った。 けれど表示されたアドレスは、○▽×@magi.comとぼくのケータイに登録されていないことを表していた。 「magi.com?ということは、これはケータイからメールしているんじゃなくて、パソコンのメーラーでメールしているって事だ。初めてじゃないけど…いったいどこで、ぼくのケータイアドレスを知ったんだろう…」 一抹の不安を感じながらメールの本文を読んだ。 『件名:なし 本文:こんばんは。あの、えーと、なんて言ったらいいのか、、、あの、いろいろサイトを巡っていて、フォールさんのサイトにたどり着きました。よかったら、おれの話、聞いてもらえませんか?ダメですか?あ、このアドレス掲示板に残っていたので、こっちにメールしました。フォールさんのプロフィールに書いてあった障害とかってほんとなんですか?なんだか身長120pの中学生なんてしんじられなくて。ごめんなさい。ダメならいいんです。でも、おれどうしてもフォールさんと話したくて、、、』 なるほど。 そういえばアドレスを一回だけ掲示板に書いたことがあった。 あれは後で消しておかなくちゃとおもいながら、ぼくはこの文章を精査した。 はっきりいって、件名もなければ、自分が何者かも名乗っていない、このメールの人物を始めぼくは、かなり訝しんでみていた。 しかし、よくよく読むうちに、その文章の稚拙さに気がついた。 例えば「…」は三点リーダという記号で、パソコンでは一般に「てん」と打てば変換される。しかし、この文章では、「…」を「、、、」と読点の連続で表している。 これは、パソコンを使い出して間もない証拠だとおもった。 「駄目」を「ダメ」と書いたり、改行が一切無いのにも幼さを感じた。 おそらく、この人…いや、この子はぼくより年下。十中八九小学生。 そうぼくは踏んだ。 そして、同時に、その言い回しや文脈から、かなり切迫した精神状態であることもうかがい知れた。 ぼくはとりあえず、まずは自分が誠実にそして簡便な言い回しで返信することにした。 『件名:はじめまして☆ 本文:メールをありがとう。 ぼくの障害について疑問を持たれているんですね。 でも、まずはお互いに自己紹介しましょう。 まずはぼくから。 ぼくの名前は、ご存じの通りフォールです。もし、もっとあなたと仲良くなったら、本名を明かせるかもしれません。けど、いまはとりあえずお互いハンドルネームで呼び合いましょう。あなたのハンドルネームも教えて下さいね。 歳は14才。中野中央中に通う中学二年生の男の子です。 障害は成長ホルモン分泌不全性低身長。これは本当にある障害ですよ。Googleやyahoo!は分かるかな?検索してみると良いでしょう。 そして、ぼくがオムツをつかっているのも本当です。生まれたときから、オムツが外れたことはありません。抗利尿ホルモンの分泌不全と膀胱が小さいことから、おしっこが知らないうちに漏れてしまいます。 だから、オムツは本当に手放せないんです。 さぁ、つぎはあなたの番ですよ。よかったら、あなたのことを教えて下さい。お互いに情報を共有し合って信頼関係が生まれるとおもうから。心配しないで。あなたのことをだれかにしゃべったりしませんし、あなたがしゃべりたいことをしゃべってくれればいいんです。』 いささか長文すぎたかな、とも思ったけれど、とりあえずこれでぼくは様子を見てみることにした。 送信ボタンを押す。 正直返信がこない可能性も考えていた。 けれど、おもったよりずっとはやく30分ほどで、返信はきた。 『件名:メールありがとうございます。 本文:はじめましてフォールさん。おれの名前は、ライドっていいます。おれも自己紹介しますね。練馬第三小学校に通う小学6年の男子です。おれも、事故で排泄障害を患って、今は毎日赤ちゃん用のおむつしています。あと、右手も少し。だから、メールを打つのも遅いです。ゴメンなさい疑って、、、でも、、、やっぱり少し信じられないかなぁ〜m(__)m14才で120cmなんて、、、見たこともないし、、、聞いたこともない病名だし、、、ほんとゴメンなさい。こんな自分が嫌で、、、。俺、ほんの数ヶ月前までは普通の小学生だったし、おむつも無縁だったのに、、、今は、、、辛くて、、、 掲示板見て、、、プロフィール見て、、、この人なら、、、と思ったんです。ほんとうに、、、もし、よければ、メル友になっていだだけませんか?悩みを聞いてほしいなと思っています。』 やっぱり小学生だった。 けれど、事故でオムツを使うことを余儀なくされているということは… この子は後天的に排泄障害を患った…すなわち、後天的にオムツを使わなければ生活が出来ない身体になったって事だ。 その苦痛。あるいは屈辱。不自由。絶望。 ぼくには多分想像することしかできない。けれど… ぼくの中にふつふつとわき上がる物があった。 この子はほおっておけない。 この子に何かしてやりたい。 そう想った。 ケータイのダイヤルでは長文を打つのに時間がかかる。 ぼくは、ケータイに接続するキーボードを取り付けて、一心にタイプを始めた。 ] [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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