おむつの小説

コラボ小説、爽快に生きよう!青空の下で…第2話
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おれたちはいつの間にか、本名で呼び合うようになった。
おれは自分の快という名前を明かしたし、同じように、フォールさんも自分の杏葵という本名を明かした。
そのうえで、おれは「あきさん」と、あきさんは「かいくん」と呼び合った。
それから、おれはあきさんに、自分にも兄弟がいること、しかも爽という名のその弟は双子の兄弟だと言うことも話した。
というよりも、おれの悩みの根幹には、おれお苦しみの根っこには、いつも兄弟の…爽の存在が横たわっていたから。

ひとしきり話してからも、話題の中心はそのわだかまりについてだった。
『件名:どうして 本文:ねぇ?あきさん?あきさんはどうして、変われたの?なんでそう思えたの?』

『件名:Re.どうして 本文:どうしてだろう…ぼくにも正確な答えが出せない。でもただ一つ言えるのは、ぼくには弟がりおがいたということ。りおがぼくの殻を最初につついてくれた。
ぼくにとって、それは最初、煩わしい物でもあったけれど…だんだんと、りおの気持ちに気づいていった。
ぼくに対する純粋な想い。ただ一緒にいてくれるだけで、ぼくが安心できるという事実。
なにより、りおが本気でぼくのことを好きだと言うことをひしひしと感じたこと。
だから、ぼくにはそんな弟の想いに応えてあげる義務があると思った。ううんそんな理屈は関係ない。
ぼくはただ、りおのことが好きだった。だから、りおの気持ちに応えたいと思ったんだ。
理屈じゃないんだ。本当にそう言う気持ちになれただけなんだよ。』

おれは…爽に…
おれは、弟の気持ちを痛いほど分かってる。
でも、プライドや申し訳なさ、全部ひっくるめた苦しい感情が邪魔をする。
おれはあきさんとりおさんのようになれない…

メールをうつキーボードにぽとりと涙がこぼれた。
いたたまれない。
おれは泣きながら、それでもキーボードをたたいた。
あきさんみたいにただ好きだと、その気持ちに素直になれたら…!

『件名:でも 本文:おれ、おれ、、、まだ受け入れれなくて、、、障害を、、、でも爽は、優しくて、、、それで、、、だから、、、その、、、話すのが怖いんです!爽に、、、おむつしてる自分が爽の足を引っ張っているかと思うと学校にも行けなくて、、、だって、爽に言えば心配するから、、、誰にも言えなくて、、、それに爽から色々求められても、おれ、、、すぐ答えられる自信ないし、、、周りと比べて、、、垂れ流すおれ、オムツを替えられるおれ、、、、それによって爽の評価ってか、友達関係や周りが爽にヒクかもとか考えた、、、おれやっぱいないほうが、、、とか、爽と仲を戻せば爽を苦しめるかもと思ったら、、、あぁ〜わかんないよ〜!おれ、いったいどうしたらいいんだ!!』

おれはもうあきさんの胸に飛び込み泣き晴らす様なつもりでキーボードをたたいていた。
実際に、もう顔は涙でべとべと。
キーボードにも涙がこぼれていた。
嗚咽がこみ上げてくる。
「うう…あぁ…ああーん。」そんな風にひとりで泣いていた。
ただ泣くことしかできなかった。

「ぴんぽん♪ユー・ガット・メィル♪」の音と共に返信が来た。
「件名:ありがとう。 本文:ありがとう。快くん。やっと胸の中の想いを全部出せたね。いやいや、まだまだあるって?うん。もっとぶつけていいよ。
でも、伝わってきたよ。きみが何を辛いと思っていて、何に苦しんでいるのか。
今、きみは泣いて良い。
泣いて良いんだよ。
我慢しないで。
辛いときには辛いと、苦しいときには苦しいと、悲しいときには悲しいと。
そうやって自分の心を表現できるのが人間の素敵なところ。
でもなかなかうまくいかない。
泣きたいときに涙は出なくて、嬉しいときには笑顔がでない。
どうして?
でもね。多分快くんのなやみはたくさんのひとがもっているよ。
それが強大なら尚更かもね。
どうしても素直になれない。この人はこんなに自分のためにしてくれているのに。
でも、それでいいんだよ。
なにもいえないなら、首を振ればいい。いやなとき、苦しいときは、当たり散らしても良い。きっと、爽くんは全部それを受け取ってくれるでしょう。
そうして、受け止めてくれるうちは、それに甘えなよ。
受け止めてもらえばいい。
でもね。爽くんも人間だよね。障害は持っていないけれど、きみと双子の兄弟で、同じ年齢、同じ学年のはずだ。きみより強いわけでも、きみのために何でも出来るわけでもないんだよ。ただ、兄弟だから。きみのことが好きだから。だから、きみのことを受け止めてくれていることを忘れないで。
考えてみて。もしも、きみに兄弟がいなかったら?
こんな風に苦しむこともなかったけれど、そんな障害への苦しみを、オムツへの屈辱をぶつける相手はいただろうか?いないでしょう?
それだけはわすれないで。
爽くんが想うように快くんも爽くんのことを本気で想ってやれたら、きっと、さっきいていた懸念や、遠慮が、無意味なものだって分かるはず。
快くんは最初からひとりじゃなかったでしょう。
兄弟…爽くんがいる。とても大切で希有な絆だよ。
だから、快くんが辛いように、爽くんも辛いときがあったら、快くんにしかきっと力になれない。
だれと比べる必要もない。
ただきみはきみらしく、爽くんの気持ちに応えてやりたいという、その想いを大事にして!
そうすれば必ず道は拓ける。
ううん。きみが歩く後に道はできるんだよ!
だから、一歩を踏み出して。爽くんに笑ってあげて。
ぼくは、そんな快くんの姿が見たいよ。
頑張らなくていいから、無理しなくて良いから、ほんの少しだけ勇気をだして。」

おれのなかを爽快な風が吹いた気がした。
それはかつておれたちが爽快兄弟だった頃に何度も感じていた、けれど事故にあってこの身体になってからはずっと感じれなかった感覚。
あきさんの言葉のひとひらひとひらが、おれの心のドアを、殻を優しく叩いた。
涙が止まっていた。
ほっぺたをぬぐう。
おれはやっと気づいた。
自分の中の、爽への愛情。好きだという気持ち。
それ故にプライドが、価値観がじゃまをして、爽を遠ざけていた屈折した感情。
けれど、もっと単純で良いんだと言うこと。
ただ、好きなら好きと言えばいいこと。
怒りたいときに怒り、泣きたいときには泣き、笑いたいときに笑えばいい。
おれのそのちょっとした行動と勇気が道を創る。
それはメールという言葉のやりとりでしかなかったけれど、おれの心を確かに救ってくれた。
ありがとうあきさん。
また涙がこぼれて来た。
でもこんどはうれし涙だった。
いいんだ。
あきさんは、今泣いて良いっていってくれたのはこういう意味だと思うから。

おれはキーボードを叩いた。
『件名:こちらこそありがとうございます。 本文:あきさん。ありがとう。おれなんかにこんなに長いメールを打ってくれて。おれ、ちょっとで良いから、やってみたいです。できるかどうか自信はないけど、でも、あきさんのおかげでやってみたいっていう好奇心が生まれました。おれ、爽のこと好きです。それは本当だと思う。だから、その気持ちに素直になりたい。笑いたい。そしたら、おれもあきさんみたいに変われますよね?一歩を踏み出せますよね?』

そして、それへの返信は…

その日、長々とメールのやりとりをしている横で、せいえいがホームページの更新をしていた。
ぼくは、今来たメールに、一計を案じることにした。
「…せいえい。よかったら、この子と友達になってみない?…」
「ん?そのメールの子か?おれが意見を言ってもいいなら、いいけど。」
「じゃあ、確認してみるね。」
せいえいが頷いた。

『件名:お返事の代わりに 本文:ところで、ひとりかいくんに紹介したい人がいます。
このホームページの歌の作詞を手がけているSay!Yeah!さんです。彼にメールを見せても良いですか?一緒にメールしても良いですか?』
返信はすぐに返ってきた。
『件名:はい! 本文:Say!Yeah!さんって、あの「二人の足し算」を作詞したひとですよね!おれ、あの歌すごく好きなんです。なんか、まるで自分たちのことを詞われてるみたいで、、、いいですよ!お友達になって下さい!』

おっと。期せずして、彼の方からぼくが話題に出そうとした曲名を言ってきた。
よし。あの話を出そう。
ぼくは、せいえいにキーボードを渡した。
「なるほど。あの歌に絡めて、ちょっとアドヴァイスをしてやればいいってことだよな。よっしゃ、いっちょ打ったる!」
せいえいがキーボードに向かった。

『件名:はじめまして。 本文:どーも!Say!Yeah!ことあがたせいえいです。せいえいってよんでください☆あきもそう呼ぶからね。
あの歌、気に入ってくれてありがとう。
実は、あの歌アンジェラ・アキの「手紙〜拝啓 十五の君へ〜」っていう歌を意識して書いたんだよ。詞の内容は全く違うけど、おれが意識していたのはあの歌。しってるかな?』

『件名:Re.はじめまして。 本文:はじめまして、せいえいさん。おれはその歌知らないです。どんな歌なんですか?』

『件名:ふふふw 本文:「手紙」はその名の通り、十五才の自分が、将来大人になった自分へ悩みを打ち明ける手紙を出し、それに大人になった自分が答えるっていう内容の歌です。
おれたちの創った「二人の足し算」よりも、もしかしたら、かいくんには良いかもしれない。是非聴いてみて欲しいな。
詞の中を少し抜粋するとね…「いま、負けそうで、泣きそうで、消えてしまいそうなぼくは 誰の言葉を信じ歩けばいいの? 一つしかない この胸が 何度もばらばらに割れて 苦しい中で今を生きている」そんな十五才の手紙に、大人の自分はどう答えるのかというと「ああ、負けないで、泣かないで、消えてしまいそうなときは 自分の声を信じ歩けばいいの いつの時代も 悲しみは避けては通れないけれど 笑顔を見せて 今を生きてゆこう」
どう?結構しっくり来るでしょう。
十五才。まさに中学生のおれたちにはぴったりの歌だったんだ。
だからすごく影響を受けてるんだよ。
快くんも消えてしまいそうな時があるよね。でも、笑顔を見せて生きていきたいよね。
と、まぁ、あとは歌を聴いてくれ☆
おれはただの作詞者だから、いえるのはこれぐらい。
参考になったら嬉しいな。』

せいえいは、頭をかきながら痩身のボタンを押した。
「こんなんでいいか?」
「…うん。ばっちり。…」
そして、すぐに返信が返ってきた。

『件名:すごい! 本文:なんかほんとうにおれのために書かれた歌みたい、、、すごいです!こんど、レンタルして聴いてみます!あきさんも、せいえいさんも、本当にありがとう。なんだか、おれ少しずつ勇気とやる気が出てくるのを感じます。まだ、どこまで出来るか分からないけれど、、、もっと、笑いたいです!』

ぼくらは笑顔でそんなメールをみた。
ぼくらの元気を彼にも分けてあげられただろうか。
そんな風に思っていると、再びメールが来た。

『件名:よかったら、、、 本文:もしよかったらでいいんです。おれ、あきさんたちと会いたい。会ってお話ししたいです。ダメですか?ダメだったら良いんです。でも、会ってみたくて、、、』

それは願ってもない申し出だった。
ぼくは、メールよりも具体的に人間関係が形作られる事を望んでいたからだ。
ぼくらは顔を見合わせて、すぐさま返信した。
『件名:もちろん! 本文:いいですよ☆是非会いましょう♪それじゃあ………』

そして、せいえいを加えた三人でのメールはまたも深夜に及んだ。
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