おむつの小説

コラボ小説爽快に生きよう!青空の下で…第4話
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快があきと話している姿をみながらおれは。
おれはりおさんとせいえいさんと向かい合っていた。
「本当にそっくりだね。髪の長さも、正直見分けがつかない。」背の高いりおさんが快と見比べながら言った。
「おれ双子の人に会うの初めてだから、なんだかこうして知り合いになれて嬉しいよ。」せいえいさんは子どものようにはしゃいで言う。
でもおれは「ええ…まぁ…」とトーンの落ちた返事しかできなかった。
おれは…もう一度あきさんと楽しそうに話す快の方をみて、押さえられない想いを感じていた。
悔しい…そんな想いをおれは自然にほとばしらせてしまった。
「りおさん?せいえいさん?やっぱりおれじゃ駄目なんですね…。なんか悔しいです…。助けてもらってこんなこと言うおれを許して下さい。おれじゃなくて、あきさんがいい…わかってるんです!快がどう思ってるか…でも母さんのことなら、あきさんよりおれじゃないのかよ!あきさんに何がわかるんだよ!…って思ってしまいます。りおさん…殴ってくれてもいいんです…勝手でしょ?でもおれ…やっぱり…やっぱりまず、おれに相談して欲しかった…おれを頼って欲しかったんです。」
おれはりおさんに非難されることも覚悟で自分の気持ちをぶちまけた。
でも、りおさんはもちろん、せいえいさんも怒りはしなかった。
りおさんは微笑んで「その気持ち、おれには分かるよ。おれだって、兄弟だもん。なんで、自分より、会ったばかりの他人の方が信頼できるのか。そんなにおれたちって信頼関係できてないのかよ!ってね。おれだって思うと思うよ。でも…」そう言うと、脚を組み直した。
「でも、兄弟だからってのもある。」
せいえいさんが句を続けた。
「兄弟だから、言えない。逆に言えば、他人だと分かっているから、言える。そういうこともある。それはつまり快くんが爽くんに気を遣っている、大切に想っている証でもあるんだ。それでも、相談して欲しい気持ちは、おれもよく分かるよ。だからおれたちがいる。爽くんはそんな想いをおれたちにもっとぶつけてくれていい。快くんがあきにぶつけているようにね。」
せいえいさんが真剣な面持ちで言った。
「そう。兄弟だからこそ、やりにくいことがあるのと同時に、兄弟だから出来ることが必ずあると思うよ。いまは、君も快くんもそれを探している。そのお手伝いをおれたちはしたいんだ。」
りおさんもそういってくれた。

そうか。
それなら、おれはおれの思いの丈をもっとぶつけよう。
いつの間にか、この二人を信じ始めている自分がいるのに気がついた。
その信頼がおれの心を揺さぶり、言葉を紡がせる。
「おれは…無理なことかもしれないけど…おれは、リハビリをしてほしいと思っています。父さんも心配してるし…あ、これは快には絶対言わないで下さい。できればあきさんにも…あ、でも、そこはみなさんにお任せしますが…。ただおれ…すいませんどうかしてますよね…」
おれは少しうつむいて肩を落とした。
上目遣いに二人の反応を見る。
ふたりは、飽くまで真剣に話を聞いてくれていた。
うん。と頷いてりおさんが先を促す。
おれは再び言葉を紡ぎ始めた。
「今は右手のリハビリ代わりに、おむつを快自身の手で替えられるように仕向けています…オムツ一丁になって、サイドを破ったり、テープをはがしたり…時には、右手で身体を支えて立ち上がろうとしたり…でも快にとってはオムツに関することは右手であろうが左手であろうが屈辱なんだろうと思います…辛いことさせてるって…多分快は、もしおれのこの企てがリハビリだと知れば怒るでしょうから…言わないで下さい…」
いいながら辛くなってくる自分を感じていた。
快のつらさをメールを読んで知ったから、自分が行ってきたことへの快の気持ちがストレートに分かって、いたたまれなかった。
けれど、言葉は止めどなかった。
「あの…りおさん。おむつって取れないんですか?いや、わかってるんです。無理ですよね…すいません。ただ…おれ、快もオムツが取れたらリハビリもすると思って…快には言わないで欲しいんですが、おれ、オムツが取れるなら、屈辱でも、幼児のようにおまるや補助便座、トレーニングパンツなんか、使ってみて欲しいと思っています…おれ、快に殴られようが、キレられようが、土下座してでも頼みます。我慢してくれ。俺も一緒におむつでも、おまるでもなんでもするから…って言うつもりです。」
おれは今にもこぼれそうな涙を堪えながら、真剣に訴えた。
それがおれの思いで、それはおれがしてやらないといけないことだと、おれの責任だと思っていた。

しばし沈黙が流れた。
りおさんもせいえいさんも黙っていた。
それは痛い沈黙だった。
おれが耐えきれなくなる一歩手前で重々しくりおさんが口を開いた。
「それが、兄弟として、君が快くんにしてあげられること?」
りおさんが真剣な眼差しでおれの瞳を見つめて言った。
おれはぎこちなく頷いた。
「君は一つ勘違いしている。」苦虫をかみつぶしたような表情でりおさんが言った。
「おれは少し厳しいことを言うよ。君は快くんのことを"可哀想だ"と思ってやしないか?手の自由を失い、排泄も自制できなくなって、なお自分と同じ、双子の兄弟である快くんのことを、可哀想だと思っている。おれにはそう聞こえた。そりゃあ、快くんにとってオムツが屈辱なのは確かだろう。泣いて嫌がったり、当たられたこともあるだろう。それが爽くんにとって辛いのは分かるし、右手のリハビリについて本気で考えたのはとても偉いと思う。そこは誇っていい。でも、快くんのために君が何かをしてやらないといけない、快の傍にはおれがいてやらないといけない、快のことは自分に責任がある、と君がもし思っているとしたら、それは傲慢だ。爽くん。きみは快くんと兄弟である以前に、爽という一人の人間だろ。同じように快くんも一人の人間だ。障害を持っていても、オムツがとれなくても、人間なんだよ。だから、爽くん。君は無理をして快くんと一緒に傷つく必要はないんだ。苦しみを分かち合っていきたい気持ちは痛いほどよく分かる。でもそれならなおのこと、快くんを見る目を変えないと。快くんは"可哀想な"兄じゃない。きみの"たった一人の"兄だよね。快くんの為にと思って、君の想いだけ押しつけても、きっとそれは快くんに伝わらない。快くんが発する物をキャッチして、その気持ちに寄り添ってあげて。それは多分辛いことだろうけれど、必ず快くんが爽くんの存在を必要とするときが来るから。それを信じて、いまは急かさず焦らず快くんの傍にいるだけでいいんだよ。」
りおさんは真剣に、はっきりとおれに言った。
その言葉は深々とおれの胸に突き刺さった。
おれは、涙が溢れ、まつげの手前でそれを止めようと必死だった。
おれは…まちがっていたんだろうか…
それから…とせいえいさんが句を続けた。
「はっきり言うぜ。神経損傷による排泄障害はトレーニングで治らない。君が土下座しても、快くんが我慢しても、一生オムツを使わなければならないのは事実なんだ。快くんにはすぐにその事実を認められないかもしれない。だから、せめて爽くんはその事実を受け止めておいて欲しい…」
二人の言葉はおれを全否定するものだった。
おれの今までやってきたこと…考えてきたことは…意味のないことだったのか。
じゃあ、いったい何のために…
絶望で目の前が真っ暗になった。

そんなおれの両肩にそっと、触れる手があった。
りおさんが微笑んでおれの前に膝を降ろしていた。
でも、と言って、りおさんが言った言葉は。
「よく頑張ったね。一人で。快くんの為に。本当はね、おれたちがこんなことを言える立場じゃないんだよ。言っていいことだとも思わない。でも、爽くんを見ていて、思った。君は本当に強くて、でも本当は弱いのに、強くあろうと、一生懸命に生きてきたことを。だから、おれたちはその爽くんに真っ正面からぶつかるしかなかった。爽くんの強さが、そしてその根っこにある大きな大きな優しさが、おれやせいえいさんの喉をかってにふるわせた。無責任だね。ごめんね。辛いことばかり言って。でも、誰よりも、爽くんは快くんの為に頑張ってきたんだよ。それはおれやせいえいさんはもちろん、おにいちゃん…あきにだってできないことだったんだ。おにいちゃんはね、運が良かっただけなんだ。ひとの苦しみを受け止めるという一番辛い仕事は爽くんに任せて、おいしいところだけもってっただけなんだぜ。忘れないでね。爽くんがいなかったら、きっとこうやって会うことはもちろん、快くんがおにいちゃんにだって話しかけたかどうかわからないんだ。快くんにパソコンを買ってやるように言ったのは爽くんなんでしょう。その気持ちが、何よりも尊いよ。その気持ちが、一番嬉しかったはずだよ。君がいなかったら…快くんがあんな風におにいちゃんと話すことも出来なかった。君がいなかったらね。」
りおさんが快の方を見ながら言った。
仲良く何かを話している二人。

おれが、いなかったら…こうして出会うこともなかった?
おれがいたから、快はあきさんと話せる…
本当に?
おれは、いてもいいの?
快のそばにいてもいいの?
「もちろんだ。君がいなくちゃいけないんだ。他の誰でもなく、"爽が"だ!」
せいえいさんが親指をグッとあげて言った。
「爽快兄弟。でしょ?」
りおさんがにっこりわらっていった。

まつげの手前の涙が…その粒が…ぽろりぽろりとこぼれた。
おれはりおさんに抱きついて、嗚咽をあげて泣いた。
声を殺して、それでもしゃくりあげる嗚咽に、声がもれて…でもそれをみんな包み込むように抱いてくれているりおさんの大きな腕が暖かくて…
心のたがが外れた。
ずっと、探していた答え。
おれが存在している意味…いままさにそれにYES!と言われた。
それがどれほど嬉しかったか…涙は止めるすべを持たなかった。

ひとしきり泣いて、おれは涙をぬぐい、笑顔で言った。
「ほんとやけちゃうな!あきさんには!」
「ほんとだね。」
「ほんとだな。」
りおさんが、せいえいさんが笑顔で言った。
おれの心にその名の通り、爽やかな風が吹いた。
大丈夫。おれは元気だ。
「ふふふ…」
自然にこみ上げた笑いに呼応するように、二人も「んふふ…」と笑い始めて…
「「あはははは!」」三人で笑った。
まさに、爽快だった。
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