おむつの小説

コラボ小説、爽快に生きよう!青空の下で…第5話
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あの日から一ヶ月の時が流れて、修了式を終え、おれたちは春休みに入った。
あきさんは、あの日その場でぱんぱさんというその人と会う予定を取り付けた。
そして、同時に、あきさんとりおさん自ら我が家に出向き、事情を父さんに話してくれた。

最初はネットで知り合った同士、そんな人間関係を父さんは訝しんだけれど、おれたち兄弟が、あきさん、りおさん兄弟と親密にしている様子と、あきさんの熱心な語り口に、父さんは折れてくれた。
「そうですか。君たちが快と爽の友達だと言うことがよく分かった。北海道に遊びに行くという君たちに、同行させる。いいでしょう。残念ながらおれは同行できないが、君は、失礼だが、その容姿の割に随分と大人びていますね。それに弟さんもしっかりしている。安心しました。どうか、うちのバカガキどもをよろしく頼みます。」
そういって、頭を下げる父さんに、あきさんたちは相当恐縮していた。
「嬉しいんですよ。君たちが未成年でなかったら、酒でも飲み交わしたいくらいにね。快が、それに爽まで、こんなに元気な笑顔を見せてくれるなんて…おれは、うれしい。」
おれは照れて頭をかいた。
爽も照れくさそうにへへへと笑った。

こうして、おれたちの北海道行きは、名目上、北海道への物見遊山というかたちで、安達家、縣家、我が家の五人が飛行機に乗って、北海道へ行くことが決まった。

そして、その前日の夜。
おれは、嬉しさを堪えられなかった。
爽が一緒に来てくれると言ってくれたこ。
あきが、予想以上に親身なってくれたことが… そして、それに応えたいと気持ちがわいてきた。
今までない気持ち。
爽が「快〜!北海道だぜ!雪!いっぱい降ってるかなぁ〜楽しみだなぁやっほ〜♪」と舞い上がって叫んだ。
いつもより明るい爽。
おれは『あたりまえじゃん!降ってるに決まってんだろ?相変わらず天然と言うか、バカだよなぁ〜、爽って』と思いながら笑った。
めざとくそんなおれの様子を見た爽が「快〜!何がおかしいんだよ!今、俺のことバカだなぁって思っただろ!?」って爽が笑って言ってきた。
おれは苦笑しながら頷く。
楽しい…すごく…言葉は出なかったけど、自然に笑えた。
おかしかったから…

一方爽は…

おれもまた、もう自分らしく楽しく生きようと思えた。
もう快には気をつかわず、快がしたいことに協力する。
それが現れる時を見逃さなければいいだけだ。
おれ自身はただ、おれの人生を豊かに生きればいい
そうしてしばらくすると、 快がムーニーを持ってきた。
相変わらず顔は赤いし、少し涙目だけど…
おれは頑張ってんじゃん!って思った。
変わろうとしてる快がいる…
目でわかる変化をくれた。それが嬉しかった。
ハンカチを用意して…
おれは密かにあきが快にしてくれたというおむつ交換の方法を、りおから聞いていた。
そのやりとりを快がすぐには言えないだろうことを考え、りおさんが気を回してがおれに教えてくれたのだった。

「快。お前、何食いたい?カニだろ…鮭、イクラ?う〜ん楽しみ!あきさん達に感謝しなきゃな!」そう言いながら、ハンカチの下のオムツを外す。
「爽、それは…」と、おれの手際を見ておどろく快。
「あぁこれ?隠しても仕方ないけど、りおさんが教えてくれたんだ。快が少しでも恥ずかしくないように何か方法はないですかって聞いたら、あきさんも昔は同じだったって、言ってた。どう?ちょっとは、恥ずかしさもましになってくれたらいいな…』
快は瞳を潤ませ、顔をくしゃくしゃにした。
「爽…ありがとう!ごめん…」そう言って快のほほを涙が伝った。
おれは「おいおい、泣くなよ。言いたいことはいつでも言ってくれよな!俺待ってるから…俺もこう見えても結構頼りになるんだぜ!」へへへと笑って言った。
快はこくりと頷いた。
それだけだけど、それで充分だった。

夜、ご飯を食べてると明るい快がいる。
父さんも帰ってきて久しぶりの3人で食事。
「明日はいよいよ北海道だな。準備はしっかり出来てるのか?」
父さんが言う。
おれが「ああ、もちろん。着替えも洗面道具も。航空券も、マフラーも、帽子も、それから…」
スプーンでゆっくりとご飯を口に持っていく快が気にならないように、快の方を見ながら「快はパソコンも持ったよ。」と続けた。
「そうか…快。楽しい旅行になるといいな。お土産楽しみにしてるぞ。」
そういって、父さんが快の頭を愛おしそうになでた。
何も言わないけど、顔色と言うかふいんきが違う。
父さんがそっと、「爽…ありがとう…な。」と耳元でささやいた。
父さんの目は少し潤んでいて、でも、幸せそうな微笑みをたたえていた。
嬉しかった。
気付いてくれた父さんにも、快にも…

おれは、そっと思い出していた。
あの日。
あきさんが北海道旅行を提案してくれたあの日。
あきさんが帰った後、やはり父さんはそれでも少し逡巡していた
「お前達だけ旅行…何しに行くんだ?あきさんはただの物見遊山だとは言っていたが…」
そう聞かれた。
俺は「その、あの、えぇと…」って言葉に詰まる…
いくら何でも何も知らない父さんにあきさんのことはともかく、ぱんぱさんのことや、そこからつながって、死んでしまったお母さんに会いに行く、なんて摩訶不思議なことを話せるはずもなかった。
けれど、その時…
父さんは「快。お前は、行きたいのか?。」真剣な顔で聞いた。
快は頷き、ゆっくり「行きたい!」と言った。
そこで、父さんはすべての不安を断ち切ったのだろう。
「よし!行ってこい!快、喋ってくれてありがとうな。快、行きたい!とか、したい、やりたい!と思うことは大切だぞ。いいか。お前にとっては、辛いことでも必ず道は開ける。頑張るならいくらでも応援するからな!」そういって頭を撫で、「これで2人で楽しんで来なさい。」と、10万円の入った封筒をくれたのだった。
そのときりおさんの言う通りだと思った。
快が助けてくれた。
俺は絶対反対されると思ってたし…
あの日の帰り「母さんの件どうだった?」って聞いても表情が曇ってたから、あまり行きたくないのか?とも思っていたから…

部屋に戻って「快?ありがとうな!」と言った。
快は笑って首を横にふる。
俺は嬉しくて、快のパソコンを借りるとりおさんにメールを打った。
快が助けてくれたことを…嬉しい…楽しい…と。

そんなことを思い出しながら、食事を終えた。
「「ごちそうさまでした。」」
おれたちは自分たちの部屋に戻った。


そして、快はというと…

『はぁ〜北海道かぁ〜 。ぱんぱさんってどんな人だろ?正直あきさんには言えないけど、そんな簡単に人に会いたくないなぁ〜。だって、まずおむつだしさ…それに寒いと漏れるもん…たぶん…。でも、こんなこと爽に言ったら「嫌なら、やめよう!」って言うに決まってる。 爽が楽しみならおれもきっと楽しめるはず…わかんないけど…だって爽快だもん!現実に少しずつ爽快になってきてるし…ただあきさんが心あたりあるって言ってたし…母さんに会えるなら…会えるなら、どんなことだって耐えれる…会えるなら、人前でおもらししたって…替えられたって我慢できる…それに爽が助けてくれる…きっと…』
自分が徐々に爽に信頼を寄せるていることに、果たしてこのときおれは気づいていただろうか。
おれはただ、母さんに…母さんに会いたい…それが叶うなら…と強い気持ちでいた。
そうやって、俯いて考え事をしていると、いつの間にか爽が目の前にいた。
「心配してるって顔だな。」
爽が言った。
おれは、こくりと頷く。
不安がないと言ったら嘘になるんだ。それが正直な気持ちだった。
「おれだって、不安だよ。ぱんぱさんって、いったいどんな人なのか…高校二年生だろ?おれたちよりも結構年上じゃん。それだけでもおれはちょっとびびってるよ。」
そうか、爽も不安なんだ。
でも、おれはやっぱりどうしてもお母さんに会いたい…
「おまえの想いは分かってるよ。と同時にそれが如何に非現実的な事なのかもね。しょうじきいって、あきさんがどうしてそのぱんぱさんたちになら、このあまりにも非現実的な願いを叶えることが出来ると確信してるのか、おれはよくわかんねぇ。だから、正直ダメもとの気構えで言った方がいいと思う。その方がダメだったときに失望が軽くてすむし…それに、ただ単純に、北海道に旅行に行くって考えたら、楽しいことは目白押し。だろ?」
そういって、爽は微笑んだ。
うん。そうだね。
ダメもとでいい。それぐらいの可能性でも、ゼロよりはましさ。
「うん。北海道旅行。楽しもう。」
「おうよ。」
そういって、おれたちは、ベッドに入った。

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