おむつの小説

コラボ小説、爽快に生きよう!青空の下で…第10話
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そこは…まるで雲の上にいるようだった。
辺り一面不思議なもやに囲まれ視界は真っ白だ。
踏んでいる地面の感触はまるで柔らかいクッションのようで、それが地面だとはとても思えない。

どう考えてもここは、あの紫織さんの家の一室ではなかった。
足の裏の感触…
そう思って初めて自分が、オムツ一丁の裸でいることに気がついた。
慌てて前を隠す。
「ふふ…隠さなくったって、ここに来たらみんな同じような格好になるんだ。だれも気にしやしないよ。」
そういって、もやの中から現れたのは、自分の足で立って歩いている、かおるちゃんだった。
彼女は、短い肌着に、やはりオムツ姿。
他には何もつけていない。
「そもそも、ここは、えーとなんだっけ…ああ、テンセイ、とかなんとかで生まれ変わる場所なんだって。だから、なにか特別な事情でもない限り、みんな生まれたときの格好に近くなるんだって。とはいえ、死んでもいないおれたちはまさにその特別な事情なんだろうけど。」
そう言って現れた歩歌くんもまた、オムツ以外に一糸まとわぬ姿だった。
「右手も動くはずだよ。ここは世界が違うから。」
そう言われてみると、おれの右手は事故に遭う前と同じように、動いていた。

不思議で、信じられなくて、でも現実。
おれはしばし呆然としていた。
「さっき歩歌が言ったとおり、ここは人が死んで最初にやってくる場所であり、生まれる前に転生して旅立つ始まりの場所でもある。君のお母さんも、なくなってすぐここに来たはずだ。本来ならそのまま魂はゆぐどらさんに還り、転生の時を待つ。でも、いままでもなんども爽くんの夢枕に現れている。ということは、間違いなくまだ、お母さんは魂の状態のままゆぐどらさんとともにいるはずだ。」
そう言いながら、かおるちゃんが歩き始めた。
「行こう。快さん。このさきにゆぐどらさんがいて、そこにお母さんもきっといる。会いに行こう。」
そういって歩歌くんが手を差し出してきた。
おれはその手をぎゅっと握った。

「すごいよ…こんな世界が本当にあるなんて…そこに、いまおれがいるなんて。まだ信じられない。君たちはいったいどうやってこんな事を…」
おれはいまこの場になっても、まだ自分の身に起こっていることが信じられなかった。
「話せば長くなるよ。ひさぎのこととか…ちょっとは聞いてるんでしょう?」
歩歌くんが手を取って歩きながら聞いてきた。
おれは頷く。
「ひさぎはハルシネーションを持った子供を見つけ、瞳を見つめることで、その殻を破る力を持っていたんだ。その子供がおれ。おれの殻を破ってくれたひさぎは、そのままおれの魂とユウゴウしていたんだって。おれの魂が安定するまでね。そしたら、結局ひさぎとは別れたけれど、ひさぎの持っていた力をおれも使えるようになってた。おれの目、黒って言うより、青いだろ?その力の影響らしい。この目で見つめれば、その人の中の「殻」を見いだすことが出来るし、ゆぐどらさんの世界と…え〜と、ひさぎはなんていってたかな…ああ、そうだ。”りんく”させることも出来る。おれの目を見つめているうちに眠くなっちゃったでしょ。あれがリンクだよ。って自分で言っててよく分かってないんだけどさ。」
ナハハと笑って歩歌くんが頭をかいた。
「超能力なのか、はたまたゆぐどらさんが与えた力なのか何なのか、わたしにもわからない。きっといまの科学では説明できないんだろうな。でも、現実だよ。みて。」
かおるちゃんが、足下を指さした。
そこにはガラガラや哺乳瓶、おしゃぶりやぬいぐるみといった、いわゆる赤ちゃんが使いそうなものが沢山転がっていた。
同時にそれが、見たこともない何かではなく、現実の世界に存在するものと一致していることが分かった。
「分かるだろう。ここもまた世界の一部。あるいは世界の裏側なのかもしれない。けれど、心だけがいける場所と言うだけで、まったく違う世界という訳じゃないんだ。」
かおるちゃんが言った。

そうか。
死後の世界ってのはこんな場所だったのか。
おれはなんだか不思議な感覚の中で納得していった。

ただ…「こんな格好で母さんに会うのは…いやだな…恥ずかしいよ。オムツ一丁なんて。」
それは本音だった。
「そんなことはそれこそ、快さんのお母さんなんだ。気にしやしないだろ。」
「おれは全然きにならないよ〜♪」
かおるちゃんと、歩歌くんがそう言った。

そんな会話の合間に、次第に晴れていくもやを、おれは感じていただろうか。
気がつけばそこは、広く開けた場所で、その中心には放射状に枝を伸ばした巨木が鎮座していた。
何の木なのかわからない。
けれど、それは地上にあるどんな木よりも太い幹を持ち、その幹は、見上げても見上げきれない上空のもやに飲み込まれていく。
幾重にも分かれた枝葉は上空の濃いもやに溶け込み、いったいその先がどうなっているのかわからない。
その枝葉からはしだれ柳のように、枝がたれ、そのさまは途方もない年月と、叡智とを感じさせた。
まるで黒白(こくびゃく)の古老のようにも、緑赤(りょくしゃく)の若頭のようにも見えるその木に、おれは初めて畏怖と言う感情を感じた。

『やぁ、よく来たね。歩歌くん、かおるちゃん。そして、曳舟快くん。』
その木がしゃべった。
いったいどこに口があるのかわからない。
そもそも口などないのだろう。
その声は、耳に伝わる音と言うよりは、心の中に直接伝わる意思といった感じだった。
「ひさしぶり。ゆぐどらさん。ん〜、一ヶ月ぶりぐらい?」
『そうだね。君がかおるちゃんとやってきたのはそのぐらいだったかな…』
なんのことかわからなかったけど、おれはそんな世間話に付き合っている余裕がなかった。
おれは木を見上げ歩み寄ると「あなたがゆぐどらさんなんですね!おれ…おれ、母さんに会いに来たんです。おれ、そのためにならなんでもするって誓って…あなたなら会わせてくれるんでしょう?お願いします!おれを母さんに会わせてください!」と叫んだ。
歩歌くんの間に割り込んでその巨木と対峙した。

しばしの沈黙がながれ、木がうっそりと口を開くのが見えた気がした。
「曳舟快くん…君のお母さんは、たしかにまだぼくの中に還らず、魂のままこの世界に留まっている。けれど、彼女…曳舟凛さんは、きわめて魂が不安定な状態だ。なぜなら、よほど特殊な自浄がない限り、この世界では魂はぼくの中に強制的に還らされてしまうからね。彼女がそれでも自分の魂の形を保っていられるのは、ひとえに遺してきた君たち兄弟への想いゆえだ。特に快くん、君への想いがかろうじて、いま彼女を彼女のままでいさせている。」
「でも…」
おれは辺りを見回した。
でも母さんの影も形も見えない。
「いないじゃないですか!母さんはいるんじゃないんですか?」おれは泣きそうになりながら叫んだ。

ゆぐどらさんがうっそりと枝を揺らした。
「状況は切迫している。君が今日来てくれたのは幸いだった。もう、彼女は具体的なよりどころがないと実体をもてないぐらいに魂が疲弊している。」
「じゃあ、どうしたら…」
「君の会いたいと言う想いが一番必要だ。叫ぶんだ。想いを込めてお母さんを呼んで!」
ゆぐどらさんのえだが一斉にゆれた。

おれはこえを限りに叫んだ。
「母さん…」最初は小さく。
「母さん…母さん!!」そして次第に大きく。
「快くんのかあちゃ〜ん!」歩歌くんが一緒に叫んでくれた。
「曳舟凛さん!」かおるちゃんも。
負けられない!
「母さん!俺だよ!!快だよ!会いに着たんだよ!」そう叫んだ。
何度目かわからない呼びかけに答えて…ずっと、ずっと会いたかった、その人が、空間から溶け出すように姿を表した。
母さんがいた。
「おめでとう。曳舟凛の魂が形を持った。ただ長い時間は無理だよ。この時間を有効に使って…」そういうと、ゆぐどらさんどころか、歩歌くんとかおるちゃんまで消えてしまった。
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