おむつの小説

コラボ小説、爽快に生きよう!青空の下で…最終話第13話
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りおさんに送られておれたちは家に帰った。
「じゃあ、またいつでも連絡してね。おにいちゃんもおれも、爽くんと快くんの友達だよ。」
そういって、りおさんは手を振った。

「おかえり。楽しかったか?」父さんに訊かれた。
「「すっごく!」」おれたちは満面の笑顔で答えた。
「そうか…よかったな。快。爽。」
そういって、おれたち二人を抱えて、頭をなでてくれた。
「疲れただろう。今日は早く寝るんだな」
「うん。そうする。」
おれたちはそう言って、部屋にあがった。
久しぶりの自分のベッド。
随分暖かい気がした。
「快。オムツ替えちゃおう。おれ、もう眠いから。」と爽が目を擦りながら言った。
「うん。お願い。」
おれは服を脱いで、パジャマの上だけ着る。
そのままベッドに寝そべった。
「よいしょっと…」爽が新しいオムツとお尻拭きをもってベッドの足下に座った。
ベリッベリッとテープをはがす。
まえだったらこの時点で泣いていただろうに、いまはもうそんな気恥ずかしさや屈辱を感じなかった。
前当てを開かれると、ひんやりした空気がおしりやおちんちんをなでて、気持ちいい。
爽がおしりもおちんちんもきれいに拭いてくれた。
「快。ちょっと、おしりあげて。」
おれは腰を浮かせる。
爽が濡れたオムツを引き抜き、代わりに新しいオムツを敷き込んだ。
またを開く。
前当てでおちんちんが覆われ、テープでとめて、ギャザーを出して…
そこで、爽の手が止まった。
「?」とおれは訝しむ。
「快。おまえ本当に変わったな。前だったら悔し涙流して、真っ赤になってたのに…なんだか、オムツを受け入れてるって言うか…変わったよな。ほんとに。」
爽が呟いた。
「おれ、母さんと約束したんだ。オムツから逃げないって。向き合うって。かおるちゃんとも約束したんだ。障害と共に生きるって。気づいたんだ。オムツはおれの敵じゃなくて、おれを守ってくれる頼もしい仲間なんだって。そう思ったんだ。」
おれも呟いた。
ぽんぽんと爽がオムツのおしりを叩いて、ニッと笑った。
「いいじゃんいいじゃん。おれたち母さんに言われたように爽快になってきてるんじゃないか。その調子で、やっていこうな。」
グッと親指をたてる爽に、おれはVサインで応えた。
「ふぁ…眠い。おれ、寝るわ。おやすみ〜。」
「うん。おやすみ。」
そうして、おれたちは帰京の日を終えた。

それから、爽が学校に行っている間は一人で、爽が帰ってきたら二人でのリハビリが始まった。
病院にも行って、いまのリハビリ方法を基軸に、発展的な要素を取り入れる方法も教わってきた。
おれは頑張ろうとは思わなかった。
ただ一生懸命に、右手の事だけを考えた。
この手を使って、もう一度学校へ行くんだ。

それでも遅々として進まないリハビリ。思うように動かない右手。
いや、正確には上達してる…
ただ自分がどんどん目標を高く設定していて、納得いかなのだと言うことにおれは気づいていなかった。
おれは次第に徒労感を募らせていった。
そんなとき、彼女のくれたメモが目に入った。
一人でぐだぐだ悩んでいてもしょうがない。
おれはそれをダイヤルしてみることにした。

「あ、あの。もしもし。おれ、曳舟快って言います。庵ヶ丘馨ちゃんいますか?…ってかおるちゃん?お、おれ!快だよ!いや、あのさ…おれ、なんか焦っちゃって…うん、わかってるんだけど、時間が変わることも。…うん、ただ…爽が待ってるって思っちゃって…自分なりに努力と目標を持ってやってるんだ。勉強だって毎日すれば、計算の式な漢字を覚えるだろ?それなのに俺は全然ダメで…やめるとかじゃないんだ。なんか早くなる方法とかないかな…?俺の右手物覚え悪くて…焦ってるわけじゃないんだけど不安でさ。」
そうだ正直おれは焦っていたのだ。
でもそれを爽には悟られたくなかった。
かおるちゃんのアドバイスはシンプルだった。
『目標を下げろ』
「不安な気持ちはよく分かるよ。なかなか結果が出ないときは誰でも焦る詞不安になるもんだ。ただし、快さん。結果は出ないんじゃなくて、出ている結果に気づいていないだけの時もあるんだよ。快さんはちょっと目標を高く設定しすぎなんじゃない?あのね、車椅子バスケでも同じなんだ。はじめからシュートが出来るように練習しないよ。まずはパスから、それが出来たらレイアップ…みたいに細かく段階があるはずだよ。だから、目標を細かく設定してみたら?到達しやすい目標にするんだ。例えば今週は一つでも多くまめを移せたら目標達成とかね。快さんはいままでリハビリにブランクがあるんだから、時間はかかると思うよ。でも確実に昨日よりは今日、今日よりは明日動くようになっていく右手があるはず。まずはそんな右手に気づいてあげることだね。物覚えが悪い右手とか、駄目なおれなんていないよ。いるのは毎日リハビリをしている一生懸命でかっこいい快さんだけ。でしょ。」

二つ下の彼女の言葉におれは雷に打たれたようだった。
ほんとにしっかりしてるよなぁ。
「ありがとう。おれ一生懸命やってるかな?かっこいいかな?かおるちゃんにいわれたらすごくうれしいよ!やってみる。ありがとう!」
「どういたしまして。また、いつでも電話してね。」
おれは、パンと顔をはたいて、気合いを入れ直し、再び机の上の箸とお椀に向かった。


箸と字のリハビリが毎日続いた。
おれは爽の力になりたいし、助けてやりたい。
そのためにはまず、学校だ!
日常生活で、やれることを増やしたいと強く思った。
けれど、やはり練習は思いのほか進まない。
なんでこんな頑張ってるのに…力が…どうしても進み具合が気になってしまう。
かおるちゃんに気にするなって言われたのに…
ポトッ…コロコロ…
『くっそ〜!!まただ…たった10粒ぐらいから、力が…いれてるのに…疲れてるのかな…震えて落ちる。なんで…なんでだよ!くっそ〜!あきらめねぇぞ!爽が…爽が待ってくれてる…母さんと逃げないって向き合う!って約束したんだ!!」
いつのまにかおれは時間と進み具合しか見えなくなっていた。 今日も練習を始める。
曲げようと力を…押さえようとすれば、走る激痛…
おれはやはり焦っていた。
爽に…昔の自分…昔のおれを伝えたい…見せたいと。
額が脂汗で濡れている。
『あぁ〜もう!!嫌だ!!できねぇ〜…』と箸を投げかけたとき、いつも励まして、傍で元気な爽がうかぶ…
知らない間にオムツまで濡れている。
悔しさ、苛立ち、焦り…色々な思いが込み上げ涙が出る…でも…
おれは続ける。
おもらししてようが関係ない!
もう一回だ!と箸を強く握る!
手のマメも痛い…でもやめない!やめてたまるか!
おれは自のを昔の姿を思い描いては消した。
それはもういまの自分じゃない。
いまはいまの自分にいま出来る最大限のことを!
その一心が苦しみの中で右手を動かした。

帰ってくる爽。
そこには昔の弱い快はいなかった。
おれをじっと見つめ、涙を見せず、時折睨むような目をする快。 快の周りに張り詰めたその空気。
けれど、おれは快のその苦悩に満ちた顔よりも、その右手の動きに驚嘆していた。
「快…お前…それ…すげぇよ!!これ、お前がやったのか?おぉすげぇ〜マジで!!こんな細かい作業いつからできるようになったんだよ!!お前もとから不器用じゃん?なのに、すげぇ〜!!」
お椀に入ってる豆、書いた字の練習を見て、お椀の豆を触りながら、おれは言った。
テンションが上がって声がうわずる。
おれは心底嬉しくて、自然に笑みがこぼれてしまった。

そんな爽を見た快は。
いつもの爽が…元気な爽やかな爽がそこにいた。

おれは泣いてしまった。
いや、知らない間に涙が流れた。
これでいいの?
いや、これでいいんだ…
俺の中に一迅の風が吹いた。
俺は俺。爽は爽。
二人で爽快で。
なにも一人で背負うことはないんだ。
足りなけれ、足せばいいんだ。
おれはやっとわかった。
爽はおれのすべてを受け入れ認めてくれてるじゃないか
俺は、俺らしく生きていく!
頑張らなくても、無理しなくても…爽快になれる!
爽が教えてくれた。
いまこの瞬間。
爽にそう言われて、初めて自分のやっていることが意味のあることだと分かった。
かおるちゃんでも、あきさんでも、ぱんぱさんでも、じゅんさんでもだめなんだ。
爽が言ってくれたからおれは…

おれは涙をぬぐった。
そして笑った。
ただ自然に。あるがままに。
「爽。ありがとう。」
爽も笑った。
「どういたしまして。」
おれたちはただ、爽快だった。

数ヶ月後。
おれたちは中学生になった。
「快。いそげ。遅刻するぞ。」
「うん。」
学ランの袖に左腕を通し…そのまま右腕を通した。
ゆっくりゆっくり丁寧にボタンをかけていく。
右腕はまだ痛い。
でも、いまではボタンが一人でかけられるぐらいになった。
いまも机の上には箸と鉛筆が置かれている。
そこには数百個の豆と、複雑な漢字が書き連ねられいた。

窓を開ける爽。
春の風が舞い込む。
漢字を書き取ったノートがぱらぱらとめくれる。
「おお、今日もいい天気だ。」
「うん。さ、行こう。爽。」
「おう。」

おれたちは玄関から駆けだした。
「「いってきま〜す。」」
「学校まで競争〜。」爽が走り出す。
「負けねぇ!」おれが追いかける。

どこまでも青い空の下、響く靴音はまさに爽快そのものだった。



<事後談>
その日。
おれたちは大阪の甲子園球場にいた。
夏の甲子園の初戦の舞台に、あの北諒高校が北海道代表で出ると聞いて、おれたちは真っ先にチケットをとった。
ここは高校野球の舞台、甲子園。
リリーフピッチャーなどいない。
その中で、あのじゅんさんが連投を続けていた。
攻防は逼迫していた。
4対3。
北諒高校が一点差で勝っている。
ここをじゅんさんが守り抜けば、北諒高校の勝ちが決定する。
でも、ここで10回に持ち越されれば…
それをなによりじゅんさんが感じているはずだった。
1ストライク、3ボール、2アウト満塁。
もはや後がない。
真夏の太陽にじりじりと焼かれながら、じゅんさんは振りかぶった。
ストレート!ど真ん中の直球勝負!

「キンッ!」
ああ!
打たれた!
みんなが一斉に息を呑むのが聞こえた。
サードランナーが走り始める!
もうダメだ!
しかし、そこに諦めている人など一人もいなかった。
三遊間をワンバウンドで抜けた打球を、前に走り出たレフトが拾い、その瞬間ショートに返球する。
それをショートがめいっぱい振りかぶってキャッチャーに返球した。
サードランナーのスライディングで、もうもうと上がる土煙。
判定は…?

「アウッ!ゲームセット!」
勝った…じゅんさんたち勝ったんだ…!
「「やったぁ!」」おれたち兄弟は抱き合って喜んだ。

「整列!」
「「あ(りがとうございま)したっ!」」
そういって、選手のみんながじゅんさんの元へ駆け寄る。
嬉しそうな笑顔。
じゅんさんがあのニマーっという笑顔で応えている。
そして、ふとフェンスの向こうにいるおれたちに気がついた。
黙ってVサインを送るじゅんさん。
おれたちもVサインを送る。
そして、じゅんさんはボールを一つとり、サインペンで何か書くと、おれたちのいるところに、ひゅっと投げた。
そのボールには「まじで爽快だった(^皿^)v じゅん」と書かれてあった。
おれたちの夏の宝物だ。
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