d-1 GP FINAL!

【みかん(第2回入選作品)】


2005-02-28
【みかん】
仕事帰りの電車での話だ。
同僚たちと一緒に電車に揺られていたのだが、ひょんなことからみかんの話になった。
同僚が言った。

「みかんの白い筋をきれいにとるのに凝っていた時期がありましたね。
それできれいになったみかんをしばらく眺めて・・・一口で食べるの!」

・・・わからない。
きれいにして、しばらく眺めるまではわかる。
だが、その後の、「一口で食べる」の意味がわからない。

そこまできれいにしたなら、じっくり一片ずつ堪能\すればいいのではないか?
つるつるになったみかんの触感を、指でも舌でもじっくり味わえばいいではないか?
なぜ、そこまで苦労して作り上げた、いわば「作品」を、一瞬にして葬り去ろうとするのか?

私が一人でそんなことを考えていると、先輩社員が言った。

「あ、俺も!」

・・・
なんだこの2人の連帯感。
なんだ、この2人のシンパシー。
なんだ、この私の疎外感...。

私の疑問点について、軽く2人に投げかけてみたのだが、やはり一口で食べることに意義があり、価値があるのであって、じっくり食すことはそれに反する行為で、満足感を得るにはほど遠いらしいのだ。

電車を降りて、一人になってからも、考えてみた。
私にも、それと似たような嗜好があるだろうか?
「わざわざ時間をかけてこしらえたものを一瞬にして味わい尽くす」という美学・・・

ない。
思い当たらない。

例えば料理でも、時間をかけて丹念に作ったのであれば、それをゆっくり、可能\であれば回数を分けて味わいたいと思う。

このような私の考え方は、おそらく「貧乏性」という言葉に形容される。
…みみっちい言葉だ、「貧乏性」。

では私以外の2人の思考を、なんと呼ぶのがふさわしいか?

「刹那主義」

やや大袈裟な感はあるが、思い付く言葉はこれである。
…かっこいい、「刹那主義」。
「貧乏性」とは正に雲泥の差だ。

…憧れる。
私も刹那主義者になってみたい。

「実際にどちらが得なのか?」と考えてみた。
しかし、そう考えること自体が貧乏性的発想なのであり、つまりは私の中に深く根付いているのが「貧乏性」であることを赤裸々に告白する結果となるわけだ。

…無理しない。
私はこのまま生きていく。



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