1500Hit:お詫びSS

【休憩】

パソコンを前に忙しなくキーボードを叩き続けて数時間が経過した。

『流石に疲れてきたな……』
キーボードを叩いていた手を休め、自然と目頭に左手を持っていった。

ジャラ…

目の前にある左手首を見れば…
嫌でも目に留まる銀色に輝く手錠。

左手を動かす度にジャラジャラと鳴る音・長い鎖の微妙な重さにも不本意ながら慣れてきた。

その長い鎖を辿って、左隣を見れば…
さっきから部屋に充満している、甘ったるい匂いの大本である《甘い物》を満足そうに食べる【竜崎】が座っている。

ふと、彼の目の前に重ねられた皿の方に目をやれば、皿の山がいくつか出来ている…。

そして…
皿の山の周りには食べこぼしが落ちていた。

『小さな子供じゃないんだから…こぼすなよ……』
心の中でぼやきつつ、竜崎の顔を見た途端…

「竜崎…」と無意識に声をかけていた。

声に反応した竜崎はと言うと…

「何ですか??…月君……」
視線は僕に向けつつも、頬にクリームをつけたまま暢気にショートケーキの苺を食べようとしていたのだが…

「そんな目で私を見ても…この苺はあげませんよ」
―――と見当違いも甚だしい事を付け加えたのだった。

その言葉を聴き、心の中では悪態づきつつもポーカーフェイスの自分の頬に指を差し…

「竜崎…頬にクリームがついてる……」と教えてやった。

「おや?それはそれは…お恥ずかしい……」
―――と竜崎は言いながら、クリームを舐め取ろうと舌を出すが届かない…

暫くの間、クリームと必死に格闘している竜崎の姿を傍観していたのだが…
竜崎は急に動きを止め、何を思ったのか僕の方を見て…

「月君…」
―――と呼んだ。

「何だよ??」
訳が分からず返事をすると…

「お願いがあるのですが…」
―――と真剣な顔で言ってきたので、首を傾げつつ言葉の先を促すと…

「クリーム…舐め取って貰えませんか??」
―――と、何やらふざけた言葉が聞こえた気がしたが…

聞き間違いだと思って…
「えっ??ゴメン…聞き取れなかったから…もう一度言ってくれ」と促せば…

「頬に付いたクリームを舐め取って貰えませんか??」
―――とふざけた言葉が再び耳に入った…。

「はぁ??」
いくらポーカーフェイスの僕でも、顔を歪まずして答える事は出来きなかった。

仮に竜崎が本物の…あの世界的に有名な探偵【L】だとしても……
Lが言う言葉じゃない。認めたくは無かった。

「竜崎…冗談も大概にしろよ……」
きっと頬は引きつっていて、コメカミには青筋が立っていたに違いない。

そんな僕の様子を見ながら…
「月君…冗談に決まってるじゃないですか」
―――と口元に笑みを作り、机の上にあったティッシュボックスからティッシュを数枚引き抜いて…頬に付いたクリームを拭き取った。

その言葉に呆れつつ、返す言葉が見つからなかったので…
「あ…そう……」とだけ答えておいた。


ほんの少し休憩のつもりだったはずが…竜崎の所為で、更に疲れが増しただけだった―――。



-終わり-



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ゅあ様へ…
遅くなってしまい申し訳ありません。

お詫びのつもりでしたが…コレでは、お詫びのお詫びをしなければなりませんよね。



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